どんな時でも咲こうとしよう
今日、とても綺麗な人を見た。
清掃のアルバイトの最中にすれ違った、ひとりの女性だ。思わず目を奪われた。
皆がマスクで顔を覆い俯いている中、
その人は綺麗に化粧が施された血色の良い顔を上げて、しっかり前を向いていた。
顔のつくりとかじゃなく、なんていうか、オーラが溌剌としていた。
暗い気持ちになんかならないで、前を向いていようっていう気概が、ビンビンにあふれていた。
これだ、と思った。
今の私に必要なのは、こういうものだ。
いつの間にか「非常事態モード」に飲み込まれていた。
綺麗でいようとすることも、忘れていた。
先週は服も毎日同じだし、どうせマスクをするからと、メイクも眉毛だけだった。
誰が感染しているか分からない。
それはそうだけど、人のちょっとした咳払いにストレスを感じたり、ドアノブに触るのを躊躇ったり、人との会話も距離を取るように最低限に留めようとしていた。
だってこんな時だから。
でも本当は違う。
こんな時だからこそ、だ。
こんな時だからこそ、精一杯自分を咲かそうとする。
そうすればきっと誰かの心もふと和ませられる。
まあそこまで気張らずに、自分に過剰に期待せずに、普段通り楽しめばいいだけなんだ、きっと。
道路の植え込みに目を凝らしたら、青くて小さい花が咲いていた。