クロワッサンを、食べずして堪能した夜
きのう、突如「クロワッサン欲」に襲われた。
何の因果かまったく分からない。
けれど、バターロールでもチョコデニッシュでもない、どうしても、あの三日月の形をしたパリパリの食感とバターの風味に溺れたい衝動に駆られたのだ。
昨日の夜遅く、銭湯へ行った帰り道のことだ。
食べようかどうか迷った。
夕方にご飯を食べ終えてしまっていて、その後は何も食べないことにしていたから。
パン屋さんは日本中どこもとっくに閉まってる時間帯だったし、早朝から仕込みに取り掛かるパン職人たちは全員眠りについていただろう。
コンビニなら近くにあった。
クロワッサンも置いてあるかも知れない。
でも、それは私の求めていたものではないだろう。
同じ名前で、同じシルエットをしていて、うっすらとバターのような風味は感じられるかもしれないけれど、パリパリの「パ」の字も見当たらない、歯切れの悪い代物に決まっている。偏見だったらごめんなさい。
さて、そういう事情だったのでクロワッサンを食べることは諦めた。
その代わり、クロワッサンを疑似体験することにしたのだ。
帰ってきて、真っ先にパソコンを開いた。
「真っ先に」というのは言い過ぎた。
正確には、クロワッサンに合うようにマグカップに温かいお茶を淹れて、パソコンを開いた。
Youtubeの検索ボックスに「クロワッサン」と入力する。
そして出会ったのが、こちらのクロワッサン。
✴︎本格クロワッサンの作り方✴︎How to make croissant✴︎ベルギーより#51
はるばるベルギーより届けられた、目の前で作られた出来立て&超オシャレ(ただし食べられません)クロワッサンなのだ!
(もはや自分でも何を言っているのか分かりません…)
さっそく実食…じゃなくて再生。
驚いた。
生地を柔らかくなるまでよく捏ねるのは分かる。
そのあと冷蔵庫で寝かせるという工程が存在することも知っている。
だけど、それ、一体何回やるんですかっ!!??!!
(数えたら、「30分寝かす」を4回繰り返してました。寝かす時間だけで2時間。。)
しかもその後、今度は冷凍庫で1時間寝かすって!
しかも生地の分け方も、適当にちぎって丸めるんじゃなくて、ナイフを使って幾何学に基づいた形状に切り取るだなんて…!
しかもしかも、焼く直前にも「スチーム発酵」なる、特殊な機械を用いた時間のかかりそうな工程をはさんでいたぞ!
どんだけ手間がかかるのよーー!!!
(クロワッサン、恐ろしい子…!)
と、普段であればただの「食べたい欲」だけじゃ得ることのできなかったであろう、「美味しい・まずい」を超えた、圧倒的な驚きと感動にただただ言葉を失うばかりであった。
そうか、クロワッサンって、こんなに有難い食べ物だったんだな。
パン職人さんはこの工程を、毎日毎日朝早くに起きてやっているんだな。
もっと大事に食べないとな。
結局口に入れることは叶わなかったけれど、それでも噛みしめるように、自分という人間がクロワッサンを身近な食べ物として手に入れられる環境に身を置いている、この奇跡に感謝の念を抱きながら、ひっそりと床についたのであった。
次にクロワッサンを食べるときは、あの手間のかかる作り方を思い浮かべながら、有難く頂くことにしよう。